ぼくらは仕事で強くなる。

人や組織のこと、事業のこと、働くってこと。LoanDEAL代表のブログです。

組織の可動領域っていう話

転職して1年半くらい経つのですが、最近いろんな人と会話をして思ったこと。人のパフォーマンスって、組織の可動領域をどれくらい理解しているか、ってことによるんじゃないかなぁ、と。

新しい組織に入ると、なかなかパフォーマンスが出せなくて悩むケースってあると思います。やっぱり、その組織が経験してきた過去の出来事だったり、企業文化的なものだったりを理解するのに時間がかかります。で、なぜそれを理解しなくてはいけないかというと、それが可動領域と直結しているからかもしれません。

どこにどういう提案を持っていけばよいか、どういう切り口の提案が良いか、どういう段取りを組めばよいか。どこは積極的にいじって良くて、どこは触れちゃいけないか、とか。最初はそれがわからないから、今まで別の組織で通用していた自分のやり方で提案をあげる。でも、それだともちろん通らない。それは提案の善し悪しではなく、押す場所を間違っていたり、動かない場所も一緒に押しちゃっているからかもしれません。まだ文化が形成されていない数人のスタートアップならいざ知らず、それなりの時間が経過していれば、良くも悪くもいろいろな蓄積がある。どの組織だって、同じなのかもしれません。

過去に私がかかわった組織を振り返っても、「この組織はすごくいろんなことができる」と感じる人と、まったく逆の感想を抱く人が、同じ場所に同時に存在します。そしてそれは、個人のスキルとは関係なく。

ですから、組織をマネジメントする側の視点で見ると、可動領域をいかに見える化できるか、ということが重要なのではないでしょうか。私も、いくつかの組織でマネジメントをさせてもらいましたが、うまくいっている時って、これが体現できていたような気がします。自分が、率先して提案をしたり、何かを実現するような行動をとっていると、周囲もコツをつかんでいく。それによって、一緒に働くメンバーからの提案がすごく増えたり、全体のモチベーションが上がったり。そして組織全体がダイナミックに動けるようになる。そんなスパイラルがあったように思うのです。一方で、近視眼的に、何かをこなすことに追われていた時は、それがうまく機能しないので、組織のパフォーマンスが硬直化したり、離職する人が増えてしまったり・・・。

翻ってプレイヤー視点で見て、ある程度のキャリアを経て転職をした場合、その可動領域自体を広げるということも、場合によっては期待されているのかもなぁと思います。それは、とても力のいることですが、こういう動きができる人が増えれば、組織において多様性が発揮され、結果として組織全体の創造力が向上していくことになりえるのでしょう。これは組織が何に期待しているかを理解したうえでないとなかなか継続できないことかもしれませんが・・・。

まぁ、食洗器に食器を突っ込みながら、このラックはこれ以上曲がらないのか・・・なんて思ってたらこんな考えに至った、というのはご愛嬌です。しばらく、可動領域ってことを意識して、いろんなところを押してみようかな、と思う次第です。

WorkとJobってどう違う?

今回、自分の仕事観みたいなものを語ってみようと思って振り返ってみたら、予備校時代の1つの講義の記憶に辿りつきました。なので、今日はそれを紹介させてもらいます。

それは、確か「英文読解」とか、そんなタイトルの、私にとってはけっこう苦痛な授業だったと記憶しています。講師は高齢で、背が高く、いつもパリッとしたスーツをまとった方でした。そして、私にとっては苦痛でしかない、かなり長文の英語を解説しながら、誰々のこの表現は実に情緒的で味わい深く云々と、予備校の授業にもかかわらず、ずいぶん感性に富んだコメントをされていました。

その先生の最後の講義で使われた英文のタイトルが「WorkとJobの違い」でした。内容はかなりあいまいなのですが、ざっと紹介すると以下のような内容だったと思います。

WorkとJob。この二つの単語は明確に使い分けられていない。でも厳密に言葉を定義すると・・・「Work」は、芸術家の「作品」を意味する言葉でもあり、「機能する」といった語感を持っている。一方、「Job」は、part time jobといった使われ方からもわかるように、時間をお金に換えるといった類のものである。よって、それは明確に使い分けられなくてはならない。

確かそんな内容でした。そして一通り論文の解説を終えた先生が、おもむろに話しはじめました。

なぜ、自分はこの講習の最後にこの文章を用意したか。
この文章には、働くことの本質が語られている。
みなさんの多くはこれから大学に進み、社会に出て仕事をすることになるでしょう。
その時にこの文章を思い出してほしい。
そして、Jobではなく、Workをしてくれることを願っている、と。

残念ながら、文章は全く記憶に残っていませんが、その言葉だけは鮮明に残っています。

結局これが、私にとって仕事に対するモノサシになりました。今でもいつも、自分は「Work」をできているか、問いかけます。画家が自分の作品に色や線を重ねるように、音楽家が音を奏でるように、仕事に取り組めているだろうか、と。

もちろん、今までのキャリアのすべての時間が「Work」ではなかったけれど、この言葉があったから、自分は軌道を修正したり、姿勢を正したりできたんだと思います。モノサシがあることっていうのは大事なことだなぁ。そしてそれを与えられたことに、感謝しなくてはいけないなぁと。

そういうわけで、今日も明日も、自分の仕事がWorkであるようにと、気持ちを新たにする次第です。 

 

追記

この内容を書こうと思ってネットで検索をしてみたところ、この講義をしてくださった先生は、もう10年近く前に亡くなられていたようです。私はおそらく10回程度授業を受けただけですが、それでも今に至るまで強烈な印象を持っています。今更ながら、教えに改めて感謝し、ご冥福をお祈りします。

 

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