ぼくらは仕事で強くなる。

人や組織のこと、事業のこと、働くってこと。LoanDEAL代表のブログです。

副業と向き合う組織と個人の一事例

なぜ、社員2人の会社が300社以上の大企業と付き合えるのか。

よく意外に思われるのですがローンディールという会社は、今のところ代表の私と時短社員(週4×6時間くらい)の、2人しか社員がいません。事務所もありません。社員数を聞かれて「2名です」って答え、オフィスは何処かときかれて「ありません」というやり取りはなかなかの気まずさを伴うのですが、そういうことに寛容な企業や人が増えて、ありがたい時代だなぁとつくづく思うわけです。きっと5年前なら門前払いだった気がします。笑

 そんな時代の後押しもあって現在、大企業十数社と契約をさせていただいているわけですが、300社以上の商談済み企業に対するフォローや月1回程度のイベントの企画なども含めてよく2人だけで回っているね、と言われることがあります。さらに、私も極端に長時間労働かというとそういうわけでもなく、週の半分は子供のお迎え、夕食の支度などもやりながらなので、家庭における責任も(最低限は!)果たせているのではないかと…

これは何も私たちがいかに効率的かという話ではなくて・・・社員は2名といいましたが、実態として事業に関わってくれている人はもっとたくさんいて、週1日分くらいのパラレルワーク(複業)のメンバーが5人、案件ごとに副業やプロボノで参画してくれている人が8名、これらの皆さんをすべて合わせると15名ということになります。

備忘という意味も込めてこのような働き方をしている組織において、チーム作りなどで気を付けていることや組織として個人に求めていることなどを書いてみようと思います。

この内容を書くにあたって期待していることが2つあり・・・

1つには、パラレルワークや副業に対する組織側の考えや状況を紹介することが、成長機会を求めて新しい働き方を志向する個人にとって参考になればいいなということ。2つ目の観点としては、新しい組織づくりの参考になるかも、なったらいいな、と。

昨今、副業やパラレルワークを志向する人は増えつつあるようにも見えますが、やはりまだみんな試行錯誤中なのだと思います。なので、うちはこういうやり方をしているよーという情報がもっと増えれば、全体としての学びも深まっていきますよね!ということでお付き合いいただければ幸いです。

 

パラレルワークや副業で、事業に関わってくれる人を増やせる。

まず、組織にとって、やはりパラレルワークや副業で、事業に参画してくれる個人が増えることはとてもありがたい。それはコスト的にもそうだし、人材の質という意味でも。弊社のように小さな企業にとって、いい人がいたからといってどんどん「一緒にやりましょう!転職してください!!」とは、なかなか言えない。一緒にやりたいなという人に限って忙しい人であることも多い。なぜなら本当に良い人材であればすでに今の会社の仕事が楽しく忙しい可能性も高く、採用活動をやっても応募してくれるような方ではない。(しかも、ぶっちゃけ年収もお高そうです。笑)だから、パラレルワークや副業といった選択肢がなければ一緒に仕事をできる可能性はゼロなわけです。

そういう背景があるので、平日の夜とか土日とかに限定された状況であっても、事業に関わってくれるとしたら、これは本当に貴重です。ただ相手もそんな選択肢があるという発想も持っていないことが多いですよね。ですから良い人がいたときに、こんな選択肢がありますよとしっかり打診できるように、切り出せる仕事が何なのかを、ある程度リストアップして整理しておくということが重要だなと。例えば、弊社、ローンディールという会社で言えば、コミュニティやメディアの運営、メンターといった業務*がこれにあたります。

*ローンディールは、大企業からベンチャー企業への「レンタル移籍(出向・研修)」という事業をやっていて、大企業の新規事業の創出や組織変革を担える人材の育成機会として活用いただいています。その際、レンタル移籍する方に伴走し、1on1での対話などを通じて成長を支援していく役割である「メンター」を、業務委託で経験豊富な方々にお願いしています。(もし、我こそはという方がいたらぜひ笑)

 

成長機会になる仕事を用意できるか、がポイント。

このように、うまく仕事を切り出して用意ができれば大きなメリットのあるパラレルワークや副業ですが、実はこの「仕事の切り出し」というのがとっても難しいのです。今の副業解禁に関する議論は制度面のことが中心で意外と忘れられがちな気がしますが、ここが一番のキモだと思います。これは、クラウドソーシングとかの場合も同様の問題をはらんでいると思いますが、結局は単なるタスクレベル(手を動かすことが中心)の業務に限定されてしまうという傾向があります。これが収入を得る目的として自分のスキル・時間を切り売りすることが目的ならばまだしも、副業を通じて何かを得たい・成長したいという意欲の高い個人に参加してほしいと考えている場合には、業務内容においてミスマッチが起こってしまいます。

そしておそらく、一緒に働きたいと思う人であればあるほど、金銭的な報酬ではなく、それ以外の部分での期待が大きいはずです。自分たちの組織が、そういう人に対してどんな機会を提供できるのか、そういう人に魅力を感じてもらうために何ができるのか。それらも踏まえて、組織の中からどの仕事をどうやって切り出して、どう渡せばいいのかを考える必要があるのです。

しかも、一緒に働いたことのない人が、実際のところどんなパフォーマンスを出してくれるか、どのくらいの期間でアジャストしてくれるか、相手のスキルレベルもわからないし、共通言語もありません。そういう中でうまく立ち上げるためには、なるべく最初は結果を出しやすいだろう仕事(本人が得意だと言っている領域など)を用意して、個人に副業でも貢献できるんだという感覚を持ってもらとよいようです。

 あと、そこまでやったとしても、そんなにすぐにバランスが取れるとは限りませんので、少なくとも数か月間は試行錯誤をしてみるというスタンスが重要だと思います。

 

 個人は「何ができるか」を明確にしておく。

このあたりの仕事の切り出しについては、働く個人の側にもぜひ理解しておいてほしいポイントです。組織側がそのような状況であることを踏まえ、働く側の個人が何か明確に「これなら貢献できる!」ということを表明してくれたり、業務を取りに来たりしてくれると、とってもやりやすいわけです。

そうやって、その個人と組織の間で一つ成功体験ができると、それを基点として仕事を進めやすくなります。ですから個人の側としては、ある程度環境が変わってもこれは貢献できる、通用する軸を作ること、そしてそれを明確化しておくことは、副業のチャンスをつかむために重要なポイントになりますね。

 例えば、リノベーションの会社で働きながら、週に1回程度の頻度で弊社にも参画してくれている及川静香さん。もう1年半くらいの付き合いになりますが、最初は仕事での接点もまったくない状態で、たまたまあるイベントで及川さんが登壇しているのを見て知り合った程度でした。たまたま一緒にランチをした時に及川さんが副業に興味を持っているという話題になって、ちょうどその時に弊社で大きなイベントを控えていたんです。そうしたら彼女から、「イベントの進行管理とか広報周りのことなら手伝えますよ」という提案をしてくれて、「じゃぁ、お願いします」となりました。その時に100人規模のイベントを一緒に実現させたという共通の成功体験ができました。その後は、コミュニティづくりを中心にしつつ、メンター業務やイベントの企画なども幅広く担当してくれています。本業では広報をやっているので、それ以外の業務を中心にお願いするということを前提に、一方で彼女の強みであるコミュニケーション能力の高さを活かせる案件は何だろうか、と考えて仕事をお渡ししています。今では「コミュニティマネージャー」という立場で、弊社にとってはなくてはならない存在になっています。

つまりまず、仕事内容という点において、組織側は個人の成長機会として提供できる業務としてどんなものがあるかをしっかりと整理し、組織の必要性と個人の要望を少しずつすり合わせていくこと。一方の個人も、提供できるものを整理し、発信し、能動的に仕事を取りに行くこと。このあたりが重要ではないかと思います。

なお、これは当たり前の話ですが、フルタイムではないからといっても事業への共感は必須です。なぜうちで働きたいと思ってくれたのか、そこで何を得たいと思っているのか・・・そういうことについてはしっかりと話し込んで、見極める必要があります。個人にとっても、わざわざ本業とは別の時間、オフの時間を活用するわけですから、単に仕事内容だけではなく、自分が本当に共感できる事業なのかどうかを、しっかりと見極めるべきだと思います。

 

コミュニケーションにおけるお互いの努力で、間を埋める。

次に、コミュニケーションについて、です。弊社でうまく一緒に仕事をできている人の場合、例えば毎週○曜日の○時~○時・・・という風に、業務に取り組んでいる時間は決まっているとしても、常にコミュニケーションはできる状態でいてくれるという傾向があります。実際に手を動かす時間は限定されていても、通信状態は常にONになっているという印象です。今のメンバーだと、半日以上会話が滞ることはめったにありません。そうなると、もはや単にリモートで働いてくれていて、たまたま目の前にいないだけなのではと錯覚してしまうほどです。

そうやって円滑に進められるように、こちらも極力レスポンスを早くすることを心がけています。個人が何かメッセージを発してくれたということは、おそらく手が空いている時間帯、だからその場で会話が片付くように、できる限りこちらからの応答は即レスで行う、といった感じです。

あと、定例会議は毎週行っています。そこには参加できない人もいるので月1回のもう少し長めの会議も設定しています。そのような場などを活用して、基本的にリモートで動いてもらっているとしても、週1回くらいは数時間でも同じ空間を共有するようにしています。作業をしている内容はうちの仕事じゃないとしても、ふとしたタイミングで他愛のない会話ができる状態というのは重要だなぁと思うのです。

さらに、私自身が日報とかを書くということを頑張っています。それも、何か業務内容を事細かに書くというよりも、自分が感じていることなどを中心に。そうすることで、日々どんなことが起こっているのか、少なくとも1日に1回くらいはうちの会社のことを思い出してもらえる、ということが大事なのかな、と。しかも、そういうものの蓄積は馬鹿にならなくて、定例会議とかでの情報共有がスムーズになります。さらに相談事があったらどんどん投げる、といったことも結構積極的にやっています。そうすることで、個人からしても業務を取りに来やすくなるということもあるだろう、と。

 

報酬や労働時間は大まかに決めて長い目で見る。

報酬について今は月○万円、という形で一律にしています。時給とか案件ごと、とかではなく。もちろん、本業があって忙しい時期があったり、逆に落ち着いているからこちらの仕事に時間をさける時期があったり、どうしても波があります。だけど、それをいちいち評価していてはそれこそ時間が勿体ないなと思います。ですから、直近のパフォーマンスでどうこうということは言わず、尺度を半年とか1年とかそれぐらいのスパンで長めに見ています。

業務時間を、都度、管理するというのも現実的ではありませんよね。きっと、本業の仕事で疲れて休憩しているふとした瞬間に、ちょっとうちの会社のことを考えてくれたり・・・ということはたくさんあるはずです。ですから副業を受け入れる側の条件として、杓子定規に何時~何時まで、みたいな制度にはしない方がいいのではないかな、と思うのです。

 

個人と組織の新しくて大切な関係が作れる。 

つらつらと書いてきましたが、個人・組織それぞれのポイントをまとめると以下のような感じでしょうか。 

【個人】

  • 本業でちゃんと技を磨き、明確な強みを持つ。
  • 事業に共感できる仕事を選ぶ。
  • 自分から仕事を取りに行く。
  • レスポンスは早く。
  • リアルな場も大事にする。

【受け入れたい組織】

  • 個人の成長機会としての仕事を考える。
  • 最初は個人の強みが活きる仕事を振る。
  • レスポンスは早く。
  • 情報共有を丁寧に行う。
  • あまり近視眼的に評価をしない。

最後に、それぞれにとって一番大切だと思うことをご紹介します。

まず個人にとって。それは本業と繋ぐことを常に意識しておきましょう、ということです。業務内容や事業領域などが全く異なっているとしても、何かリンクすることが出てくるかもしれません。それは人脈かもしれないし、普通に仕事をしているだけでは浮かばない発想かもしれません。完全にスイッチを切り替えるのではなく、常にちょっとずつ混ざっているような形で仕事をすることで、思いがけない発想や成長機会などに出会えるのではないかと思います。

次に組織にとって。事業に共感してくれていて、かつ副業・・・という個人の意見は非常に重要だと思います。とくに、「正しさ」に対する貢献が、大きいと思います。生活が懸かっている、軸足がこの会社にあるという状態では、売上や利益といったものに当たり前のように制約を受けてしまいます。しかし、副業の場合にはその軸足が必ずしもここに無いので、だからこそ本来どうあるべきか・・・といった視点で議論がしやすかったりします。これは、そちらの方が良いということではなくて、そういう視点を加えることができる、という意味でとても重要ではないかな、と思っています。

組織にとっても個人にとっても、パラレルワークや副業というのは有意義なことだと、身をもって感じています。ただしまだ双方にノウハウがないため、かなり意識をして取り組んでいく必要がありますね。

そして、事業をやっている身としては、事業に対する人の共感があってこそ。だから、常に常に課題を深く捉えて、正しさをぶらさずにいなければいけないなと。そして貴重な時間を割いて一緒に事業を進めようとしてくださる方々に感謝をしながら、とどまることなく前に進んでいきたいと思う今日この頃です。

 

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2018年5月に開催されたイベント前、司会原稿を読む及川さん。この会場が満員になるほどのイベントを切り盛りしてくれています。